消化器外科領域での鏡視下手術
群馬大学大学院医学系研究科 臓器病態外科学(旧第2外科)
助手(医会長)川手 進
医員 吉成大介
講師 竹吉 泉
はじめに
鏡視下手術は、腹部あるいは胸部に直径5―10数?の小さな穴をいくつか開けて直径10?ほどのカメラを挿入し、カメラからテレビモニターに映し出される画像を見ながら、穴から挿入した細長い器械を使って行う手術です(写真)。腹部の手術の場合は、二酸化炭素ガスを注入して腹部をドーム状に膨らませて空間をつくり、手術を行います。
鏡視下手術は、通常の大きな皮膚切開の手術に比べて、?痛みなど負担が小さい?腸管のまひが小さく、術後早期に食事ができるようになり、入院期間が短くなる―など多くの利点があります。問題点としては、開腹手術に比べると難易度が高く、医師にトレーニングが必要とされることです。
百日咳、防衛の1行目
消化器外科領域では1987年、フランスで胆石の手術に最初に応用されました。わが国でも90年代に導入されて以来、胆嚢以外の手術にも急速に広まりつつあります。そこで、当科での鏡視下手術、特に消化管のがんに対する手術について述べます。
治療の選択肢
大腸、胃、食道など消化管のがんは、管の食べ物が通る面(粘膜)で発生し、病気の進行とともに消化管の壁の深部へもぐっていきます(浸潤)。がんが深く浸潤するほど、リンパ節や他の臓器へがん細胞が転移する可能性も高くなります。転移の可能性のほとんどない浅いがんは現在、胃内視鏡や大腸内視鏡で、消化管の内側からがんを切除できるようになりました。
一方、ある程度の深さにがんが浸潤し、リンパ節に転移する可能性があると、消化管とともに消化管の周囲リンパ節の切除が必要になります。このような場合、開腹手術が一般的ですが、近年、鏡視下手術の技術の普及や器械の進歩により、開腹手術ではなく、鏡視下手術でリンパ節を切除できる症例が増えてきました。
消化器がんで実施
当科では大腸がん、胃がん、食道がんに対して鏡視下手術を行っています。
軽度のパラノイアは何ですか
■大腸がん 大腸がんは鏡視下手術が最も早く普及した消化器がんです。当科では、大腸内視鏡で切除できない早期がんと進行がんの一部に鏡視下手術を行っています。がんが大腸のどの部位にあるかにもよりますが、5個程度の小さな穴をおなかに開けて操作し、最後に穴の1つを5?前後に拡大して小開腹します。大腸の一部とリンパ節を摘出し、この小開腹部から残った腸同士を縫い合わせる(吻合)か、カメラで確認しながらおなかの中で腸同士を吻合します。根治性にも十分留意し、開腹手術と同等の腸管切除やリンパ節切除を行っています。
■胃がん 胃内視鏡で切除できない早期がんと進行がんの一部に鏡視下手術を行っています。当科では、以前から胃の機能温存に留意し、がんの部位に応じて、胃の出口側のみを切除する手術(幽門側胃切除)、胃の中央部を切除する手術(幽門温存胃切除・分節胃切除)、胃の入り口側のみを切除する手術(噴門側胃切除)、胃を全部切除する胃全摘術など、病変に応じたきめ細かい手術を行ってきました。
鏡視下手術でも開腹手術同様に胃の機能温存に努めています。また、根治性に留意し、リンパ節切除も開腹手術と同じ範囲で行っています。大腸がん手術と同じく5個ほどの小さな穴を腹部に開けて操作し、5―7?まで小開腹し、胃およびリンパ節を摘出、吻合します。
何がemotinalストレスを引き起こす
■食道がん 従来の食道がん手術は、右胸部を大きく切開(開胸)して胸部食道周囲を手術し、腹部も大きく開腹して腹部食道周囲を手術します。食道の代わりとなる胃管(胃を細長くしたもの)をつくり、頸部へつり上げ、頸部を切開して胃管と頸部食道を吻合します。消化管手術の中では患者さんの負担が最も大きい手術です。神経周囲のリンパ節切除による神経のまひ、胸・腹部の大きな傷による痛みのため、術後に思うようにせきができず、重篤な呼吸器合併症を起こすことも少なくありません。
そこで当科は食道がんの手術も鏡視下で行っています。開胸創は5?、開腹創は7?までに小さくし、負担を大きく軽減することで、術後合併症の減少に努めています。
当科の特徴
胃がん、大腸がん全例で、術前に3D―CT(立体的に見えるCT検査=図1)で血管や大腸の走行、胃の形、リンパ節を立体的に映し出し、手術に伴う合併症の予防や正確なリンパ節切除に努めています。これは、同じ部位のがんでも、血管の走行や胃・腸の形、長さが、患者さんによって異なるためです。
がん以外の疾患にも適応
がん以外にも、胆嚢摘出術、虫垂切除術、副腎摘出術、脾臓摘出術などが鏡視下手術に適しています。虫垂炎では、穿孔して腹部全体にうみが広がり腹膜炎を起こしていても、3個ほどの小さな穴を開ければ手術できる場合があります。これは腹腔鏡によって腹部全体を見渡し、腹腔内のうみを洗浄することが可能なためです。従来、このような虫垂炎の手術は比較的大きく開腹する必要があり、大きな傷が残りました。
最後に
鏡視下手術はまだ歴史の浅い治療法です。実際の治療に際しては、患者さんに十分説明した上で、開腹手術も含めた治療法を選択しています。
健康通信倶楽部トップページへ戻る
0 件のコメント:
コメントを投稿